三朝探訪
ずっと大切にしたいもの
開湯840年以上の歴史を持つ「三朝温泉」。
そのお膝元の三朝町を、
少しだけ目線を変えて眺めてみると、
のどかな温泉地としてだけでは括れない、
“地域の宝物”との出会いがあった。
鳥取県の真ん中に位置する東伯郡三朝町。東西24km・南北19kmにおよぶ町の面積は、西部の日南町に次いで2番目の広さ。その9割を山林が占めるとあって、深山に自生するトチノキをはじめ、手つかずの自然の美しさ・生命力の強さが色濃く残るエリアだ。国宝・投入堂を有する三徳山・小鹿渓谷。高濃度のラドンを含むラジウム泉で名高い温泉郷。そして、岡山県との県境をなす山あいの集落群…。それぞれの地域では、豊かな自然・風土と寄り添いながら暮らしを紡ぐ人たちが、時代を越えて大切にしている“コト・モノ”がたくさんある。今回の山陰サイズでは、町の人たちが遺したいもの、守りたいものをピックアップして、三朝町ならではの魅力に迫ってみたい。
大谷かばん
自生するガマを活かした伝統の手仕事が、原料生産・技術継承で復活へ
国道179号より約8km奥へ入る三朝町大谷地区は、標高600mの深い谷間にある集落だ。この地では、昔から水田や沼地に自生するコガマの茎を利用して、農作業に使う「負いこ」や「手提げ」を編んできた。雪がちらつき始めた頃に刈り取ったガマを、冬場の身を切るような清水で丹念に洗い、約1か月間天日でじっくり乾燥させ、さらにゴミを取る。そんな手間をへて丁寧に編んだかばんは、艶があって水に強い。雨や霜に合うことでより強さを増し、20年~30年と使い続けることができる。その技術は、たたら製鉄が盛んだった頃、この地の男衆の冬場仕事だった炭焼き用の俵作りにルーツがあるという。
作り手の減少、水田の機械化などで原料のガマの確保しにくいことから、伝承が危ぶまれていた大谷かばん。だが、平成19年に設立した『竹田地域協議会(清水光雄会長)』が、原料生産と技術継承に取り組んでいる。最後の作り手となった澤成節子さんから指導を受けた3名の女性を元に、現在作り手は6名。また、今年度から穴鴨の水田に苗を植え、ガマの栽培に着手した。「県外にも、大谷かばんの愛用者がたくさんいます。手仕事の伝統を絶やさず、新たな大谷かばんのファンも作りたい。」と、清水会長。山あいの暮らしの中から生まれた“用の美”は、今、第二の創世記を迎えている。
◎お問い合わせ
竹田地域協議会
住所/東伯郡三朝町穴鴨168-1
電話/0858・44・2535

三朝豆腐
温泉水&在来品種の地大豆『三朝神倉』で
大豆の味と香りがしっかりする本物の豆腐を製造
三徳山の麓の集落、神倉。この地区のある農家が栽培する大豆は、昔からおいしいという評判が語り継がれてきた。近年、その地大豆の栄養成分を検証したところ、他の一般的な県産大豆と比べて「イソフラボン」の含有率が1.8倍高いことが判った。JA鳥取中央では、平成20年に三朝地大豆生産組合を設立し、特産品化へと歩み始める。今年3月には「三朝神倉(在来種)」として品種登録され、地元での栽培普及が進んでいる。
その三朝神倉100%で作った豆腐に出会ったのが、神倉地区からほど近い場所にある能見豆腐店だ。創業100年以上の老舗とあって、5代目店主の能見貞明さんが気さくに迎い入れてくれた。貞明さんは約23年前に小鹿渓の麓からこの地に移転し、専用井戸の地下50mから汲みあげる三朝温泉水で豆腐作りを行っている。さっそく神倉大豆を使った「みささ美人おぼろ」を試食させていただくと、なめらかな舌ざわりで大豆の風味が濃厚。そのままでも充分おいしいのだ。ラドンやバナジウムを豊富に含み、清涼飲料水に匹敵するという温泉水が、地大豆「三朝神倉」のおいしさをフルに引き出しているのかもしれない。
◎お問い合わせ
有限会社 能見豆腐店
住所/東伯郡三朝町吉田611-5
電話/0858・43・0598
営業/8時30分〜なくなり次第
定休/日曜
カジカガエル
三徳川の源流域の奥山に広葉樹(ブナ・ドングリ)を
植える活動で“かじか”の鳴き声を甦らせる
4月の終わり頃。三徳川(三朝川)のせせらぎに、『ルルル~♪ コロコロ…』と澄んだ音色が重なり始めたら、山あいの町に遅い春が訪れたことの知らせ。カジカガエルは、川の清流が無ければ棲息できない。5月から7月、繁殖期を迎えた“かじか”の鳴き声は、川辺の人たちに安らぎを運ぶ音風景であると共に、三朝町の自然環境がすこやかに保たれていることの証しでもある。
野口雨情作詩の『三朝小唄』に登場するなど、湯の町の原風景と称されたカジカガエルも、三徳川の源流域がある奥山の荒廃などからその姿が激減した時期があった。町内では、『三朝温泉かじか蛙保存研究会』(※昭和54年、カジカガエルの声を聴く会として発足)が中心となって、平成6年頃から源流域(中津・高橋・俵原)にブナ・ドングリといった広葉樹を植える活動を継続中している。これまでの参加者は、地元の小学生、町民・県外者有志と、延べ1000人以上。研究会代表の御舩道子さんは語る。 「カジカガエルを通して、ふるさとの海・山・川についてみんなで考えたい。三徳川の源流域の広葉樹、カジカガエルをはじめとする川辺の生物、そして日本海の魚は深い関係で結ばれていることを子供たちに知ってほしいですね。」
◎問い合せ先
三朝温泉かじか蛙保存研究会
住所/東伯郡三朝町三朝895 電話/0858・43・0521
三朝温泉観光協会
住所/住東伯郡三朝町三朝 電話/0858・43・0431
たくさんの温泉とカジカガエルに会える街
三朝温泉街を散策
古くからの郷土食は、三朝みやげの代表格「とち餅」
三朝町の町木は、広葉樹のトチノキ。秋になると、栗のような実が熟す。ほろ苦さを併せ持つ「とちの実」は、古くから“長寿の妙薬”と伝えられ、町の人たちはていねいにアク抜きをし、雪で峠越えができない冬場の保存食品として大切に食べ継いできた。三朝町周辺では、今でもとちの実を加えて搗いた餅で雑煮を調え、新年を祝う習慣が息づいている。
搗きたてのモチ生地で小豆のこし餡を包んだ「とち餅」。とちの実独特の香ばしさ・かすかなほろ苦さが特徴で、甘いものが苦手な人も喜ぶおいしさ。三朝温泉内の和菓子店などで製造されている。
散策の合間にプチ贅沢ランチはいかが?
三朝薬師の湯・万翆楼の食事処『翡翠桟敷』では、備長炭の炎で豪快に炙った鳥取牛・日本海の魚などを、予約要らずの昼御膳で気軽に楽しむことができる。メインの炙り料理に、三朝町の特産米を使ったごはん&味噌汁、ざる豆腐、お造り、デザートなどが付いて1500円(税込)から。食事処を利用すると、万翆楼本館の温泉入浴券・1000円が半額になる特典付きだ。たとえ日帰り散策でも、充実した時間が過ごせることまちがいなし!
炙り房「翡翆桟敷(かわせみさじき)」
東伯郡三朝町山田5(万翆楼内)
電話/0858・43・0511
営業/11時30分~14時、18時~21時
定休/水曜


